物語

花は散れども

大正の終りに広島市から山一つ奥に石内尋常小学校はあった。五年生の担任は市川先生。クラスには、良人・みどり・三吉がおり。授業中に三吉が居眠りをしても田植えの手伝いをしていたのが判ると咎めず、奈良に修学旅行に行けば遭遇した映画撮影隊に田舎者と罵倒された事で喧嘩をし、良人の母親の死には一緒に泣く。全人格を生徒にぶつけた先生であった。良人の家は倒産し、みどりは良人を心配するが、三人は卒業と同時に離別する。
30年後。良人は東京で売れない脚本家となっている、村の収入役となった三吉が市川先生の定年祝いに良人を呼ぶ。会場はみどりが女将をする料亭。戦争をはさんで集まった同窓生それぞれの30年があった。夫を戦争で失った者、原爆被爆に今も苦しむ者。語っても語り尽くせない人生に良人は圧倒され自分のふがいなさを思われずにはいられなかった。その夜。みどりからなぜ何も告げずに村を去ったのかと迫られ、良人とみどりは夜の海で関係をもった。
5年後、市川先生が脳梗塞で倒れた。先生は定年と同時に小学校の目の前に家を借りていた。教職を離れても生徒たちの声を聞きたかったのである。駆けつけた良人にろれつが回らない口で「オマエノドラマヲミテイル、エエモノカケ」と励まされる。先生が亡くなり、良人はみどりに結婚を申し込むが、みどりはあなたは脚本家でしょう。田舎の料亭の主人になるのかと拒絶され東京に帰ってゆく。